話しながら手を引つ張つていたことは事実です。
話しながら手を引つ張つていたことは事実です。
下ろそうとしていたことは事実です。
見えました。何故に下ろさねばならんかということが私共座席の者には不思議に思えました。
聞えませんでした。
はあ、足と胴のあたりから、金子さんの手の間から手を出して……
見えません。
見えなかつたです。
私には左の手で足を引つ張つていて、右手は何かを掴もうとしていたように見えました。
私採つていることを見ません。
それから椅子に眞つ直ぐになつて副議長が話し始めたものですから、今度は直ぐ議長席の後ろを廻つて、松嶋氏の右側へ行つて、何か大きな声で言つておられるのを見ました。
たしかそうです。
初めの瞬間は金子さんが松嶋さんの肩に手をかけて、左の手で松嶋さんを頻りに引下ろそうとしていて、中西さんと両方の力でもつて、椅子が非常に傾きました。あの大きな椅子がこう傾いた、危いと思つたのです。今度は副議長の右側から誰か脚を引張つたか、或いは誰か押えたか、とにかく椅子が元へ戻つた。そのとき金子氏は今度は引つ張ることを止めて、松嶋氏の左の方に行つて、あの大きな椅子の蔭から今度はその紙を掴もうとして、手を出したことを見ました。
その前の瞬間です。
後ろに廻らない。自分が廻つていたのを、直ぐそこから立つて今度はもう引き下ろすことがかなわないと……
事務総長の間でありません。松嶋氏に手を出して、今度はその紙をつかんでおられるのを見ました。
到達したかどうか知りませんが、私は、鷲づかみにして、しわくちやになつて、これは大変だと思いました。
併し前の人は手が届かない。
北村さんがしきりに引伸して抑えておつた。
私は後からつかんだと思います。
私は、金子氏と中西氏がしつかり議長の左脇からつかんで、案を読ませないようにして、紙もしわくちやになつたところは見ました。そうして北村氏はこれを防いだことは見ましたが、議長席の前の人がこれをつかもうとしたことは記憶がありません。