私は始めからやめる氣でありましたから、どうも氣に喰わないと思つて断わろうと思いましたのですが、初めから、初めて会つた方に、このようにいきなり蹴飛ばすわけにもいきませんから、よく考えて置きますと答えただけなんですから……。
私は始めからやめる氣でありましたから、どうも氣に喰わないと思つて断わろうと思いましたのですが、初めから、初めて会つた方に、このようにいきなり蹴飛ばすわけにもいきませんから、よく考えて置きますと答えただけなんですから……。
とにかく、言うことがちよつと変でしてね。工合でも悪いじやないかと聞いたが、何でもない、工合は悪くないと言つておりましたがね。氣の強い人ですから、別に取上げて悪いようには感じないのですね。
ふだんよりか、このところが痩せておりまして、眼の置き方が少し変でしたね。
丁度そのときに医者にかかつておりまして、本人も言つていました。どうも胃潰瘍のような氣があると自分でも言つておりました。大事にしなければならんと先生が言つたと自分でも言つていました。
本人がですか。
主人がとにかく俺の体が悪い、こういうところに長く入れられると死にそうだ。先生に会つて出られるように頼んで呉れと私に言うておりました。
野崎さん。刑務所のお医者さんですか。
名前は知らないのです。
あります。
刑務所で会いました。
そうです。療治して頂きまして、診察して頂きましたのです。それで先生に聞きました。そうすると先生の言うには、少し精神にあれして、頭が変だと言うておりました。それに胃潰瘍の氣がちよつとあるからと、先生が言つて呉れました。
聞きました。
そうです。
いいえ、知らないのです。それは。
それでも自分の主人ですから、ああいう所に入つておれば心配ですから、よく聞きました。
氣にも掛けないことはありません。ああいう所に行けば、やはり病氣になり易いですから。私は入つたことはありませんけれども。
教えられません。
そうです。親切に教えて呉れました。こういうわけで体の工合が悪いのだから、注射を打つたり何かしますから、だんだん落着くでしよう。心配しない方がよいということを言われて、それで実は安心して帰りました。
それは私知りません。分らないです。それまで、ああいうところのことは、私知らないですから。
それは主人が、一應どんな……、先生が言わないから聞いてごらんと、工合が悪いとき主人が、とにかくどこが悪いのですか聞いてごらんと……、先生に面会できるかしらと言つたら、できるから面会してごらんと言われたのです。