ところが、澁江という人がここで証言してくれたのは、五、六回運んだように言つておるのです。そこでふしぎが起つて来るのですが、あなたにはそういうことを澁江から言つておらないのですか。
ところが、澁江という人がここで証言してくれたのは、五、六回運んだように言つておるのです。そこでふしぎが起つて来るのですが、あなたにはそういうことを澁江から言つておらないのですか。
それからもう一つ記憶を呼び起してもらいたいのですが、あなたとしては責任上御調査なすつたと思うのですが、伊藤に聞きました場合に、これはどういうことですか、さつきのお話では明確でございませんので、私たちにはちよつとわかりかねたのですが……。
しかし持ち出したということは言つておりませんでしたか。伊藤は先ほどあなたに持ち出した事実をはつきり申し上げた、こう言つておるのです。
しかしあなたの調査の目的は、持ち出したかどうかということにあつたのですし、これはあなたの責任もありますから、かなり厳重にお調べになられたと思うのです。御記憶がないことはないと思います。職務からいえば非常に重要なことですから……。
それではもう一度伊藤がここに来て話をしたら思い出しましような。それからもう一つお聞きしておきますが、澁江は、自分が持ち出したことも詳細にあなたに言つたように私たちは証言で聞いたのです。私の誤りであつたかどうかわかりませんが、そのことをあなたはここで、澁江と対質してみたら、記憶を呼び起すことはできますでしようね。
それで今度は回送品を百俵渡した。九十五俵しか積めなかつた。五俵は預かつた。こういう場合に何日も預かるのですか、どういうことになるのですか。
そうすると、そのものを請負人に渡すでしよう。そうすると三日も四日も一週間も運送会社に行かなかつたとすれば、非常に故障が起るのじやないですか。
ですから運送請負人があなたから引渡しを受けたら、何日もそれを自分の倉庫に保管しておくということはあり得ないことですね。
引受けたらただちに発送してやるということが建前でしよう。日時は切られておりますから……。
ですが、百俵のうち九十五俵今日は持つて行つた、五俵はまだ行かないということになれば、運送会社に渡すのは百俵として渡さなければならないのですから、喜連川の請負人である笹沼の倉庫に何日も置くということはあり得ないでしよう。
倉庫に預かるということは全然ありませんね。
それではよろしゆうございます。
言葉じりをつかまえるのじやありませんが、あなたはこうおつしやいましたね。澁江が、タバコを笹沼が盗んだということを言い出したのは、一年経過後、感情のもつれがあつて言い出したんだ、こうおつしやいましたわ。
感情の疎隔があつてということは何か原因をあなたは聞いたのですか。そうあなたは想像したのですか。そうしてまた感情のもつれがあるから、澁江の言うことがほんとうでないとでもあなたはお思いになつたのですか。
あなたの方で澁江、伊藤に専売所からタバコを運ばしたことがあると言いましたね。
何回ぐらいか記憶ありませんか。二十一年の六月から八月まで。
量が幾らかもわかりませんか。
それは全部あなたが一たん専売所から託送を受けて、自分が受取つて引受けたもので、運び出したものの残部があつたものをあなたがあなたの倉に持つて来た、こういうわけですか。
そりすると、澁江や伊藤に運ばせたものは、積残しのものを運ばせたとこういうわけですね。
記憶にははつきりないけれども、運んだとすれば、運ばせたとすれば、積残しのあつたものを運ばしたので、決して不正がないのだ。こういうわけですね。